【作品紹介】禅と芸道に学ぶ上達の秘訣

7.道、東洋の芸術 より


私は芸道を愛しています。

芸道とは、簡単にいえば東洋の芸術のことです。

代表的なものに、

茶道、華道、舞踊、音楽、絵画、書道、礼法、のようなものが、

あります。

芸術とは少し違いますが、

弓道や剣術などの武道も芸道のうちに入るかもしれません。

祖父がいくつかの名人といわれるような人であったので、

私は祖父について三歳から、ある芸道をはじめました。

それはとても印象的で、

はじめて教えてもらった日のことを今でも鮮明に、

言われたことを、ほぼ、一言一句欠かさずおぼえています。

(もっとも、芸道が面白くなったのは十四、五歳の頃でしたが。)

私は芸道を愛しています。

私が芸道を愛するのは、それが調和を作り出すからです。

東洋の芸道では、

茶道でも、舞踊や音楽、書や絵画でも、あるいは、礼法のようなものでも、

東洋の芸道では、

はるか昔に決められた型を変えることなく、

何年も、

何十年も繰り返し、繰り返し、演じます。

(もちろん、必要に応じて、新しい型を創作することもありますが、

新しい型を創作したあとも古い型を演じることをやめることはありません。)

その型自体は、

実社会ではなんの役にもたちませんが、

でも、それをすることは、

自分自身のうちに調和をつくりだしてくれるのです。

ただ美や芸術の鑑賞者にとどまるより、

自分自身の内側の奥深くから調和を体験させてくれるのです。

東洋ではその体験を「道」と呼んできました。

古代ギリシャの哲学者たちは、

調和こそ美であり、

善であり、

存在を存在たらしめるものであると考えました。

芸事の型を演じることは、

そういった調和を、

外側からでなく内側から体験させてくれるのです。

頭ではなく、身体で、

頭ではなく、心で、存在で体験させてくれるのです。

古代のギリシャの哲学者たちは、

魂に調和、善や美があることほど幸せなことはない。

ともいいましたが、

私もまた、調和を体験するとき、そのように思うのです。


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